生物学専修の一般選抜方式
2023年度一般選抜より、生物学専修では、大学入学共通テストと個別試験からなる入試方式(C方式、D方式)に移行しました。生物学専修のカリキュラムでは、生物学専修ならではの自然科学的な思考力・考察力が必須となりますので、そのような力を個別試験で問い、これに共通テストを組み合わせる方式としました。なお、多様な学生を受け入れるため、共通テストの教科については、5教科(C方式)または3教科(D方式)を選択することができるようにしています。詳しくは、早稲田大学教育学部入試情報をご覧ください。
生物学専修の個別試験について
個別試験の内容については、2024年度一般選抜の入試問題、2023年度一般選抜の入試問題と、新しい制度の導入にあたって作られたサンプル問題を公開していますので、参考にしてください。下に問題の解説を掲載してあります。
入学者に求める力
理学科生物学専修では、物理・化学・数学といった自然科学的な背景や意味を理解しつつ、生物学における様々な課題を解決する人材の養成を目指しています。価値観が多様化し、種々の課題が顕在化している現代社会においては、単に暗記した知識を引き出すだけでは、複雑化する課題を発見し、解決することは難しくなっています。そして、この点は自然科学の研究においても同様です。自然界の対象に向き合い、実験を通してその背景にある原理を追求する際には、実験結果を整理し、そこから自らの頭脳により情報を抽出・解析して仮説を立て、さらにそれを検証していくプロセスを繰り返すことが必須です。知識を持っているだけで考えることをしなければ、研究はできません。考えることをいとわない学生を生物学専修は求めています。(サンプル問題の解説より、引用・改変)
2024年度の個別試験の問題解説と受験者へのメッセージ
生物学専修には、8つの研究分野の研究室があります。研究室における研究内容は、物理生物学、生化学など、物理や化学の知識が必要となる分野や、環境生態学のように環境とのかかわりの中で生物を考える必要のある分野など、多岐にわたっています。そのような幅広い研究に共通して必要なのは、狭い分野の固定した知識ではなく、さまざまな物事を柔軟に結びつけて考える能力です。生物学の知識は入学後でも身に付けることができますが、「考える」という点については、是非、入学までの間に習慣づけるようにしてほしいと思っています。そのため、入学試験の問題も、単純な知識を問うのではなく、いろいろな角度から考えをめぐらし、場合によってはその思考の過程を楽しんでもらいたいと思って作成しています。
例えば、大問I で扱うのは、遺伝情報を担うDNAの構成成分であるヌクレオチドです。しかし、そこでは、よく見られる遺伝のしくみを問うのではなく、ヌクレオチドの化学構造からDNAの状態を考えることが求められています。また、教科書では4種類あるとされるDNAのヌクレオチドに5種類目が存在した時に何が起こるか、ということを想像して考えることも求められます。
大問II のテーマは位置情報のセンシングです。鳥の渡りといった地球規模の位置情報や、昆虫の帰巣という比較的ローカルな位置情報、細胞集団の分化における微小空間での位置情報といった、全く異なる空間スケールの実験データを題材に、実験の結果をどのように解釈し、どのような結論を導き出すことができるのかを考えることを求めています。鳥の渡りと細胞間のシグナル伝達とでは全く現象が異なると思うかもしれませんが、実験結果から物事の本質を読み取るための考え方には共通点も多く、実際に研究を始めてみると、そのような考え方こそが重要であることに気が付くと思います。
さらに大問III では、スペースコロニーなどの閉鎖系における生物と生物、あるいは生物と環境の相互作用が主題となっています。ここで求められる能力は、複数のグラフの情報を組み合わせて思考する能力や、特定の状況について与えられた情報を分析して、なにが起こっているのかを推測する能力です。また、生物の個体数の変化の動態を問う問題においては、初歩的な数学の理解が求められます。
これらの問題で扱っている5種類目のヌクレオチドやスペースコロニーの知識は、高校の教科書に載っているものではありません。しかし、中学の理科の知識をもっていれば、問題文から必要な情報を読み取って考えることで解答可能な問題がほとんどです。教育学部・生物学専修は、そのように考えることを楽しむことができる学生を求めています。
2023年度の個別試験の問題解説
大問I では、光の吸収にかかわるランベルト・ベールの法則や量子収率のスペクトルなどの題材が扱われていますが、実際にそれらの知識を持っていなくても、問題は解答可能です。一方で、複数のグラフから読み取れることを、総合的に考察する能力が求められる部分があります。
大問II では、自然界に存在する周期的な現象の特性を読み取り, 生物に見られる周期的現象を自然現象の中に位置づけて理解する力が求められます。生物が発生し生きていく過程において, 細胞内や環境により生み出されたリズムが遺伝子の発現パターンを調節し, 個体レベルの表現型に反映される過程を考察する能力が問われます。
大問III では、個体や組織の生命活動とその背景にある分子レベルのメカニズムの関係を題材としています。生物学の研究においては、たとえ個体レベルでの研究であっても、背景にある分子メカニズムを考えながら進める必要があります。そのために、組織などのレベルのマクロな動きやエネルギーを、分子レベルのミクロな現象に結び付けて考える能力を問いました。